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暗黒ポトフ

 レポートが大変だってこの時期に事件は起こった.
 あれは一昨日のこと,もの珍しくて昼飯にポトフを食べた.学食でポトフなんてあんまり聞かないだろ? ちょっとハイカラじゃね,なんて思ったりして.しかし,現実は無残にも理想を打ち砕いた.その味はハイカラなんてものからは程遠い.まずい,というほどでもない.けど,ラップで包まれて出されたそれは程悪いぬくもりと程悪い味加減によって,おいしいとは言い難い代物になっていた.
 そして,その夜.俺は確実にそいつのせいだと信じているんだが,吐き気に近い気持ち悪さがやってきた.のどもとの1歩2歩手前まで吐き気を催しているのだが,出すことはできない.むしろ出せればどれだけすっきりすることか……一思いに吐かせてくれ! 毎秒そう願いつつも許されずもだえ苦しむしかない.
 そんなときに見る夢にいい夢などありえないもので,何か複雑でどうしようもない数学的思考を,もちろん俺には理解などできようもないのに,理解を強要されそうしなければならないという強迫観念に取りつかれ,ただ闇雲に手の届くはずのない真理を追い求める夢を見た.こんな悪夢を見て目を覚まさないほうがおかしい.深夜に目を覚ましては吐き気と戦い,それから束の間の眠りについては悪夢にうなされ,そしてまた目覚める.明日までずっとこれの繰り返しか,いや,明日もこれの繰り返しか……これは悪夢よりももっと残酷な現実だった.
 しかし,明くる朝また目覚めると,吐き気はなくなっていた.なんと幸いなことだろう.これで懇願をはねのけられることもない.あの悪夢を見ることもなかろう.が,いい知らせには悪い知らせが付き物だ.昨晩はまったく平常どおりだったというに,目覚めてみれば39.9の高熱.どれだけの悪意を込めればこのようなポトフが作れるのか.不思議ではあったが,吐き気と悪夢から解放された喜びのほうが大きかった.
 とはいっても,高熱であることもまた事実.学校の授業はそこそこに諦めて医者にかかることにした.俺はそこで期待していたんだ.食中毒的な何か,食べ物を原因とする病であることを.だって,ポトフじゃなければいったい何が原因だというのか.そのほかはまるっきり普段と変わらぬ日常だったのに.が,医者は言う.
「これはお腹の風邪ですね」
 はあ,風邪ですか.風邪って食中毒的な何かではないよな.ポトフじゃないというのか.いや,そんな馬鹿なことが…….高熱でうなされていながらも,俺は呪いのポトフに思いを巡らせていた.
 最悪インフルエンザの可能性もあるということだったが,それに類する症状は高熱以外一切なく,診断通りお腹の風邪だったようだ.処方された薬の効果もあってか,今現在はこうして暗黒ポトフの危険性について筆をとれるほど快復している.

 さて,レポートの締め切りは明日23時59分.病魔に侵されながらもなんとか8割程度書き上げた.きっと明日には完成していることだろう.いや,完成していなければならない.

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